次の朝
げた箱のところで
隆成を待っていた。

「おっす!」
きのうとは打って変わった
いつも通りの隆成がやって来て
私に挨拶する。
私は恐る恐る
「あの・・・」
話を切り出そうとしたけど
「秀樹から聞いた。よかったな」
隆成はニカッとする。

「ご・・・」
私が謝ろうとすると
「ストップ!」
隆成が阻む。

「秀樹にも言ったけど、謝んなよな。オマエらがひっついたからって、オレたちは変わらねぇよ」
隆成はいつも通りニカッと笑う。
今まで隆成のニカッに何度助けられただろう・・・。

「ありがと・・・」
そう言うと涙が出て来てしまった。
「なに泣いてんだよ〜」
隆成が私のアタマをクシャッとする。

「も・・・う・・・友だちには・・・戻れないかと・・・思った・・・・・・」
「そんなん、悲しすぎるだろ!オレたち、一生友達じゃん!」
―― 一生友達・・・

「そ・・・だね・・・」
私、涙でぐしゃぐしゃの顔で笑う。

「あー・・・オレ、やっぱオマエのとーちゃんの座、狙おうかなぁ?」
「は?」
「彼氏になれねぇなら、とーちゃんになって監視してやる!」
「は?マジでムリだから」
「そんな若者言葉、とーちゃんは許さないぞ!」
隆成はまた眉間にしわを寄せて
私のお父さんになりきる。
めちゃくちゃ笑えるんだよ、この隆成の顔!
私、また別の意味で涙が出て来る。

お父さんになられても困るけど
隆成は・・・
本当に
最高にいい男だよ・・・。



「おっ、エビフライも〜らい!」

数日後のランチタイム。
隆成のお弁当のエビフライを
ぱくり
つまみ食い。

「おい!オレがエビフライ好きなの知ってるだろ!」
「そっか、はい、返す!」
そう言って、しっぽを返した。

「オマエなぁ・・・しっぽだけなんていらねぇよ!」
隆成に捕まって
お得意のヘッドロックを食らわされる。
「きゃー!ごめんごめん!」
そこへ・・・

「おい!隆成!人のもんになにやってんだよ!?」

秀樹が血相を変えてやって来た。

ひ、人のもんって・・・
もしかして私!?

「人の体操服にこんなにでかでかと落書きしやがってっ!」

・・・なわけないか・・・・・・。
ひとりで勘違いして
恥ずかしくなって苦笑い。

「あ、バレた?」
隆成が少しヤバッて感じでニカッとする。
「バレた?じゃねぇよ!!」

秀樹の体操服の背中には
野球のユニフォームみたいに
「18 NOMURA」
って油性マジックで書いてあった。
しかしまぁ、でかでかと・・・。
これじゃ、いくら温厚な秀樹でもさすがに怒るよね。

そう思いながら
体操服をまじまじ見ていると
呆れ切った表情をした秀樹が

「それと・・・」

と言うのと同時に
私の腕をグイッと引っ張って 肩を抱き寄せる。

「これもオレのもんだから、気安く触るんじゃねぇぞ!」

思いがけない
秀樹のひとこと。

「へーへー、ごちそうさん」
隆成は付き合ってられんって感じに
ペロッと舌を出す。
秀樹はしてやったりのとびきりの笑顔。
私の顔はみるみるうちに真っ赤になる。


こうして
いつもの3人に戻った。

少しだけ
前進して・・・。