はぁ〜・・・
今日は結局
秀樹とも隆成とも
顔合わせられなかった・・・。

秀樹も隆成も
どんなにモテたって
ずっと私のそばにいてくれたから
慢心してたのかもしれない・・・。

こうなって初めて
秀樹や隆成に
フラれた女の子たちの気持ちが
痛いほど分かる。
そりゃ、いつも一緒にいた私のこと
ずるく見えるよね。

心が・・・
やけどしたみたいに
ひりひりじんじんする・・・。
なのに・・・
秀樹を好きな気持ちは
大きくなるばかり。

大きくなればなるほど
ひりひりじんじんが
ひどくなるのに・・・
気持ち・・・
止められない・・・。

隆成にはちゃんと言わなきゃダメだよね。
隆成のこと・・・好きだけど
隆成が言ってくれた意味での好きじゃないって
分かっちゃったから・・・。


帰宅部組の下校は
ほとんど過ぎたこの時間。
ひとり
坂道を
とぼとぼ下っていると

「美奈!」

後ろの方から呼び止められる。
振り返ると
走って来る人がいて・・・。

秀樹だ!

「部活は?」
私の前で立ち止まった秀樹の
向こうの方に見える校舎に目をやって
声が震えそうになるのを必死でこらえる。
やっぱり顔
直視できない・・・。

「休んだ・・・もっと・・・大事なことがあるから」
秀樹が少し息を切らせながら言う。

「大事なこと?」

「・・・オレ、美奈のこと好きなんだ」

私、少し面食らう。
きのうのことがあるから
まさかここで友達としての
『好き』
を言うわけないよね?
じゃあ・・・

「な・・・に?きのう、ごめんって言ったじゃない!」

こんなに落ち込ませておいて・・・!
なんだか、腹が立って
少し声を荒らげてしまった。

「違うんだ!美奈に好きだって言われたのはびっくりしたけど嬉しかった。だけど、瞬間に隆成のことも考えてしまって・・・結構テンパった・・・」

秀樹は隆成が私を好きなこと知ってて・・・
隆成に遠慮したんだ。
自分の気持ちより隆成を優先しちゃったんだね。
そういうとこも好きだけど・・・
私のこと、イチバンに考えてほしい!
なんて・・・
私、自分のことばっかりだ・・・。

「でもさっき、隆成に言われた」
「え?」
隆成に?
「美奈への気持ちが譲れる程度のものなのかって」
秀樹の穏やかな表情が
私の心の
ひりひりじんじんを
消していく。

「そう言われてから気付くなんて情けないんだけど・・・オレの美奈への気持ちは隆成にだって譲れない!」

秀樹の言葉が力強く放たれた。

「美奈、もう1回ちゃんと言っていいか?」

秀樹の優しい瞳が
私をまっすぐに見る。

トクン・・・
ゆっくり心臓が鳴る。

「オレはずっと美奈が好きでした。オレと付き合って下さい」

「・・・・・・はい・・・」