放課後。

「美奈」
「隆成?」
いつになく、真剣な表情だ。
「ちょっといいか?」
「あ・・・うん・・・・・・」

私たちは教室を出て
屋上にやって来た。

「どうしたの?改まっちゃって・・・」
私がそう言うと
背を向けていた隆成が
くるっ
私の方を振り返る。
思わず
ドキッとしてしまう・・・。

意を決したように
隆成が口を開く。

「オレ、美奈が好きだ」

え?

「・・・私も隆成好きだよ・・・?」
「違う。友だちとしてじゃなく・・・・・・」
「・・・・・・」

しばらく
沈黙が続いた後

バンッ!

屋上の扉が開いた。

「隆成!こんなとこでなに掃除サボってんだよ!」

クラスの男子たちが隆成を探しに来た。
私も隆成も顔が真っ赤になる。

「れ?鹿口も・・・」
「2人で逢引き〜?」
「あっやし〜」
ニヤニヤしながら 口々に言う。
「バカッ!ちっげーよ!」
隆成はそう言うと
みんなと一緒に行ってしまった・・・。


しばらくして教室に戻ると
もう誰もいなかった。
電気が消された薄暗い教室の窓から
呆然とグラウンドを眺める。
グラウンドからは部活にいそしむ生徒たちのかけ声。
なんだか、いつもより遠くに聞こえる気がする。

どれくらい
そうしていたんだろう。
教室の後ろの扉が
ガラッ
開いた。

練習着姿の秀樹だった。

「・・・どうしたの?」
「タオル持ってくの忘れてさ」
秀樹はそう言いながら
机からタオルを取って
私に
「まだ帰らないのか?」
と聞いたけど
私はもう言葉を返せなかった。

「美奈?」

異変に気付いた秀樹が
私の方へ近づいて来て
「・・・なんかあったのか?」
私の顔を覗き込んでびっくりしてる。

私が泣いてたから・・・。

秀樹の顔を見たら・・・
もう気持ちを抑えられない!

「好き!」
「えっ?」
「秀樹が・・・好きなの・・・」

秀樹はさらにびっくりして
目を見開く。

だけど
すぐに冷静な表情に戻って
私から顔を背ける。

「ごめん」

それだけ言って教室から出て行った。


隆成に好きだって言われて
初めて自分の気持ちに気がついた。
それなのに・・・
いきなり失恋しちゃったぁ・・・。

涙は
とどまるところを知らなかった・・・。



翌日
2人と一緒にお昼を食べられるわけがない。
朝から顔合わせてないし
口も利いてない。

「どうして野村くん柏木くんと一緒に食べないの?」

今日は一緒にお昼を食べている由枝ちゃんが
不思議がるのは当然だ。

「私と食べるの、そんなにイヤ?」
心配してくれてるのに・・・

じろりと上目使いで
由枝ちゃんを見てしまった。

「そうじゃなくて・・・」
由枝ちゃんが苦笑いして続ける。
「アンタたちが一緒にいないのっておかしい。野村くんと柏木くんもなんだかよそよそしいし・・・なにがあったか知らないけど、早く仲直りしなよ?」

由枝ちゃん・・・
私も元に戻りたい・・・。
だけど・・・もう戻れないかもしれない・・・。

私のせいで2人も変な雰囲気になってる。
朝からほとんど口利いてる様子がないもん。

それより・・・
私、隆成になにも伝えてなかった・・・。
ちゃんと・・・言わなくちゃ・・・。