中3の春――

「隆成!秀樹!差し入れだぞー」
いつもの河川敷のグランドでの練習試合。
缶ジュースを持って陣中見舞い。

「オレ、コーラもーらい♪」
隆成がそう言って
私からコーラを奪い取る。
「秀樹はいつものヤツね」
「サンキュ!」

ぷしゅ〜!!

勢いよくなにかが吹き出した音と

「うわっ!!」

隆成の驚きの声が同時に響いた。

隆成が缶を開けた瞬間
中身が吹き出したのだ。

「美奈っ!コーラ振っただろっ!!」

隆成は吹き出したコーラをモロに浴びた模様。
「べ☆」
私、舌を出してピースサイン。
してやったりだ♪

「オマエなぁ!」
「きゃーーーーっ!!」
隆成に捕まって
ヘッドロックを食らわされる。
でも
私だってやられっ放しじゃない。

「隆成は文句言える立場じゃないでしょ!」
「え?」
「そーだよな。あのエラーがなけりゃ、オレ、パーフェクトだったのに」
秀樹も私の援護射撃。
「・・・あ〜・・・・・・」
隆成の目がバツが悪そうに宙を泳ぐ。

さっきの練習試合で隆成が超芸術的なトンネルをしたおかげで
秀樹のパーフェクトが台無しになってしまったのだ。
ノーヒットノーランでも十分にすごいんだけどね。

パンッ☆

「ごめんね!秀樹くん!!」
隆成はそう言って秀樹に手を合わせる。
私はやっと隆成のヘッドロックから
解放されたけど
隆成のコーラのベタベタが移っちゃった・・・。
と思っていると
ふわっ
アタマにタオルがかけられた。

「それ使っとけ。キレイだぞ」
秀樹がタオルを指差しながら片目を閉じる。
「ありがと!」


秀樹は2年の時からエース。
よく気が付いて、すごく優しい。
隆成はチームの主軸4番。
明るくて元気なキャプテンだ。
2人は私にとって
とても大切な友達です。



ある日の休み時間

「美奈っちは野村くんと柏木くん、どっちが本命なの!?」

友達の由枝(ゆえ)ちゃんが勢い込んで聞いて来る。
「本命!?そんなのないよ!」

私、2人といる時がイチバン素の自分でいられて
居心地いいんだ。
だから、どっちかを選ぶなんてそんなの考えたこともない。

「2人とも、すごくモテるじゃない?」
「へっ?」
由枝ちゃんのその言葉に
思わずすっとんきょうな声が出る。
今、2人って言ったよね。
念のために聞いてみる。

「2人って・・・誰と誰?」
「なに言ってんの?野村くんと柏木くんじゃない」

えっ?
秀樹がモテるのは元々だけど・・・
隆成が・・・
あのお調子者がモテてる!?

「いつ!?何時何分何秒!??」
「は?」
由枝ちゃんが怪訝な顔をする。
「隆成がいつモテたって!?」
「去年の秋ぐらいから・・・今じゃ、校内の人気ランキングかなり上位だよ。って、いまさら!?」
うっそー!
隆成がモテてるなんて全然知らなかった!!

「美奈っちは近くにいすぎて分かんないかもしれないけど2人とも、いい男になったよ」
驚く私を前に由枝ちゃんがうししと笑う。
「遠巻きにちゃんと見てみれば分かるって♪」
遠巻きに・・・ふむー・・・。