次の日の放課後。
久しぶりに部活に行った。
「あや先輩!」
「アンタが体調悪いなんて!」
「天変地異でも起こるんじゃないかと思ったよ!!」
みんなが口々に一気に訊ねてくる。
一応、体調が悪いってことで休んでたんだ。
「いや〜、虫食べちゃってさ〜!なんかずっと調子悪かったんだよねー!」
「虫っ!?」
「アンタ、ホント野生児だよね〜」
「あやちゃん、体調はもういいの?」
「はい!もう大丈夫です!」
ホントは・・・
調子悪いのは身体よりも心なんだけど・・・・・・。
先輩、きっと気にしてるよね?
きのう、まどかに
『あやちゃんの気持ち、伝えなくちゃね☆』
って言われるまで
自分のことばっかりで
先輩の気持ちとか考えてなかった。
一般的に考えて
好きな子にコクったのに
受け入れられるでもなく
フラれるでもなく
宙ぶらりんな状態ほど酷なことはないよね。
しかも、あれ以降
ずっと避けられてるような態度で・・・。
だから、ちゃんと今のあたしの気持ちを伝えようと思って来た。
・・・んだけど!
ひゃ〜!
久須美先輩!!
久須美先輩の姿を目にすると
やっぱり考えるより身体が先に反応して
体育館の出入口に吊るされてる暗幕カーテンの中に隠れてしまう。
「あや?なにやってんの?」
「あー・・・はははは!」
はぁ・・・
笑ってごまかしてみたものの
とんでもなく意識しまくってる・・・・・・。
先輩見ると
心拍数がありえないくらい高くなって
胸が苦しくなるんだ・・・・・・。
練習が始まった。
久しぶりだから少し身体重い気がするな。
いつもなら先輩、声かけてくれるのに
今日は全然なんだ。
今思えば、あれだけ声かけてくれてたってことは
見てくれてたってことだよね?
だけど、今日はあたしが先輩に視線をやっても
目が合うことすらない。
もう・・・嫌われちゃった・・・・・・?
ズキッ!
なんだ?
この胸の痛みは・・・・・・。
・・・・・・・・・。
ダメダメダメ!
今は練習に集中しなきゃ!
また週末には練習試合があるんだ!!
「あやちゃんっ!」
麻子先輩が上げてくれたトスに向かって
「はいっ!」
力強く踏み切ってジャンプする。
そして
このぐにゃぐにゃした気持ちを吐き出すように
ボールに力を伝える。
ダンッ!
ボールがフローリングの床に突き刺さった。
その時
特に見るわけじゃないけど
久須美先輩の姿が目に入った。
と言うか・・・
目が合った・・・・・・。
また心臓がドキドキし始めて・・・
そっちに気を取られて・・・・・・
ダダンッ!!
痛っ!
足の甲の方から着地するような感じになって
身体を支えられず、床の上に倒れてしまった。
「あや!?」
「あやちゃん!!」
みんながいっせいに駆け寄ってくる。
「大丈夫っ!?」
「足、ひねったんじゃない!??」
足を見ると
足首のところが真っ赤になって腫れ上がってる。
熱を持ってて・・・ドクドク痛む・・・・・・。
足、めちゃくちゃ痛いけど・・・
それよりも胸が痛い・・・・・・。
全然集中できなかった。
先輩のことばっかり考えてた。
あたし・・・
先輩のこと・・・・・・。
「めっちゃ腫れてるじゃない!」
「え!なに!?泣くほど痛いの!??」
そう言われて
自分が泣いてることに
初めて気付いた。
違う。
これは
痛くて泣いてるんじゃない――
 
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