変にウワサになっちゃうと
お互いに避ける感じになったりするけど
久須美先輩は今までと変わらず
あたしに接してくれた。
ひとつだけ
少し変わったことと言えば
普通に学校生活をしている中で
久須美先輩を見かけることが多くなった。
たぶん、今までも先輩はそこにいたけど
あたしの中での先輩のポジションが変わって
目に入るようになったんだと思う。
元々、よく声かけてくれる先輩ではあったけど・・・
確かにあの朝練以降
以前よりも先輩が近くなった気がする・・・。
あれから2週間ほどが経って
ウワサはだいぶ下火になって来たけど
まだ、怖い視線を感じる今日この頃。
大事件が勃発する。
「きのう、帰りの電車で隣にめっちゃイケメン男子が座ってさー!」
お昼休み、お弁当を食べながら
なちのバカ話に付き合う。
「はいはい、それで?」
「途中で寝ちゃって、こっちにもたれかかって来んのー!もう、ドキドキしちゃって!起こしちゃかわいそうだと思って、自分の降りる駅で降りられなかったの!」
「どこまで行ったの?」
「終点」
「ぎゃはっ!バカだ!コイツ、バカだー!!」
あたし、爆笑!
まどかもお腹抱えて声が出せないくらい笑ってる。
大口開けて笑ってたおかげで
ん゛む゛っ!?
口の中になにかが飛び込んで来た!
変な感触・・・。
飛び込んでくる直前に目視したものを思い出すと・・・
少し大きめのハエみたいなのだった!
ありえない!!
虫が口の中入って来た〜〜!!!
あたし、大慌てで席を立って
「む゛ーーーーーっっっ!!!」
口元押さえて教室をダッシュで飛び出す。
「あやちゃん!?大丈夫!!?」
まどかの心配する声と
「ぎゃはは!あや、おもしろすぎ〜!!」
なちのバカ笑いが後ろから聞こえた。
あとで首絞めてやるっ!!
ふー・・・
10回はうがいした。
まだ口の中、気持ち悪いや・・・。
ちょっとグロッキーになりながら
ハンカチで口元を押さえて
ふらふら教室へ戻ろうとしていると・・・
ぎょっ!
あれは・・・
こないだの女バス!!
3人いるかな?
あの時と変わらず、怖い顔をしている・・・。
3人してこっちを見て
明らかにあたしに用がある感じだ。
案の定
あたしに近寄って来てこう言った。
「綾部さん、話あんだけど」
人気の少ない屋上へ連れて来られてしまった。
あたし、生きて帰れんのかな?
「久須美くんと付き合ってるってホントなの?」
リーダー格の人があたしを睨みつける。
「全部、ただのウワサですけど」
あたしも弱腰にならないように毅然として答える。
「でも、久須美くんは全然否定してくれないの。なんでよ?」
そう、そこなんだよね・・・。
先輩、なんでなにも言わないのかな?
根も葉もないバカバカしいウワサだから
放置してるだけなのかな?
「そんなこと言われても・・・あたしも分かりません。むしろ、否定してもらった方が・・・」
そこまで言うと
「アンタ、何さま!?」
「はい?」
突然、逆上されて
驚いて目が丸くなる。
「それ、『こっちが願い下げ』って言ってるように聞こえるんだけど!」
はぁ?
「久須美くんとウワサになるだけで許せないのに、なにその上から目線!?」
全然分からないけど
めちゃくちゃ怒ってるよぉ〜!!
「いや・・・上から目線とかそんなつもりは・・・・・・」
さすがのあたしもひるんでしまう。
ちょっと待ってよ・・・。
これじゃ、なに言ってもムダなんじゃ・・・・・・。
「アンタにそんなつもりなくても!周りが見たらそう見えるの!!」
「ハルはね、1年の時からずっと久須美くんが好きなの!」
「最近、やっといい感じになってきたのに・・・アンタに横やり入れられて台無しよ!」
3人が口々にあたしを攻め立てる。
そんなこと言われたって・・・知らないよぉ〜。
そう思って
一瞬
苦笑いしてしまった。
「なに笑ってんのよ!!」
ヤッバ・・・!
とっさに口元を手で覆ったけど
時すでに遅し。
あたしの苦笑いが火に油を注いでしまった!
久須美先輩を1年の時から好きだっていうハルって人が
怒り心頭で目に涙をためながら
「・・・んっとに・・・!許せない!!」
右手を振り上げた!
ヤダー!
ぶたれるっ!!
なんであたしがこんな目にーー!!
 
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