ふふっ☆
練習、楽しかったなー♪
なんて思いながら教室に行くと

「ちょっと!あや!!」
「な、なに?そんな勢い込んで・・・」

中学の時からの友だち・那智和歌子(なち わかこ)が
ただならぬ雰囲気であたしに詰め寄る。

「さっき体育館で久須美先輩と2人、いい雰囲気だったって!?」
「はっ!?」
「えーっ!?あの久須美先輩!??」

あたしと一緒に驚いているのは
同じく、中学の時からの友だち・畑野まどか(はたの まどか)。

っていうか!
なんだそれ!?

「いい雰囲気って・・・一緒に練習してただけだよ!」
「一緒に練習!?って・・・2人だけで!?」
「だって、今日朝練ない日だもん」
「じゃあ、なんで2人は練習してんのよ!?」
「やりたいからだよ!なんかおかしい!?」
「えーっ!先輩と2人で練習したいって!?」
「違うよ!ひとりで自主練しようと思って来たら、たまたま先輩がいただけ!!」

なんだよ・・・めんどくさいな・・・・・・。

「あや、今、めんどくさいと思ったでしょ?」
うっ・・・
「なんで分かんだよ・・・?」
「顔に出た」
なちがニカッと白い歯を見せる。

「どぉ?アンタのウワサ好きのタネになる人の気持ちが少しでも分かった?」

そう、あたしは無類のウワサ好きなんだ。
人呼んで“早耳のあやちゃん”。
“歩く拡声器”なんて言われてるのも知ってる。
だって
自分で言うのもなんだけど
友だち多くて、あっちこっちから情報入ってくるんだもん。
でも、ウワサのネタになるのは初めてだよ・・・。
これは確かにめんどくさい。
少し自重しなければと思わざるを得ない・・・・・・。

それにしても、今回、広まるの早すぎない?
ほんの10分ほど前までの話だよ?

「でもさ、久須美先輩とウワサになるなんて、さすがあやちゃんだよぉ〜」
「だよねー!初スキャンダルが校内のアイドルなんてさっ☆」
「あやちゃんが持って来るウワサの中に久須美先輩のって今までなかったよね?久須美先輩も初スキャンダルだぁ」
「いいなぁ〜!私も久須美先輩とウワサになってみたいー!」
「ホント、久須美先輩って素敵だよね〜」

なんだよ、2人とも
好き勝手言ってくれちゃって!

っつーか
「おい、まどか。そんなこと言ってると帆風にチクるぞ」
「いいじゃない!“彼氏”と“憧れ”は別物なんだよ!ね、まどか!」
「うん、久須美先輩は見てるだけでいいけど、帆風くんはすぐそばにいてほしい人なんだぁ」
「うっわ〜!結局、のろけですかぁ〜?」
「やだっ!そんなつもりじゃなかったんだけど!!」

真っ赤になって焦ってるまどかを
なちがさらに冷やかしてる。

まどかは中学の時からの片想いを実らせて
今はらぶらぶなんだよね。
元々、女の子らしいかわいい子だったんだけど
帆風と付き合うようになってから、ますますかわいくなったなって思う。
すっごい引っ込み思案だったのも、あまり気にならなくなった。
恋は女の子を変えるんだね・・・。

まぁ・・・
あたしには到底
関係のないことだわっ!

あたしはそう思っていたんだけど
世間さまがなかなかそうさせてはくれなかった。