「がんばってね!」
まどかの声援を背に
桜太が練習してる体育館にやってきた。
がんばるって・・・
何をがんばるのかよく分からないけど・・・・・・。
まどかによると そろそろ練習が終わるらしい。
体育館の中をちょこっとのぞくと
男バレの連中しかいない。
女バレがいたら都合悪いしね。
絶対、あやに見つかっちゃうもん!
これは好都合だ。
体育館の出入口付近で身を潜めて
お弁当と さっき食堂で買ったクリームパンを抱えて
練習が終わるのを待つ。
ヤダ・・・
なんだか
緊張でドキドキしてきちゃった・・・・・・。
恋する女の子が
好きな男の子を待ってるみたいな・・・
って!
なんで私がこんな気持ちになんなきゃなんないのよ!
ぶるっとアタマを振って
ドキドキを振り払おうとするけど
全然止まらない。
なんてやってると
練習が終わったみたいで
ぱらぱらと男バレの連中が
体育館から出て来始めた。
ますます
ドキドキの音が激しくなる。
もう、全身が心臓みたい。
5〜6人が出て行ったあと
単独で
首から掛けたタオルで汗拭きながら
桜太が出てきた!
これ幸い!!
「おっ・・・!」
声を掛けようとしたら
「桜太くん!」
え?
私まだ呼んでない・・・。
明るく軽やかな声と同時に
桜太に駆け寄っていく
ふんわりとした女の子らしい
まどかみたいなタイプの女の子の姿が見えて
思わず、また身を潜めてしまう。
え?
えっ?
なにが起こってるのか
理解できないでいる私をよそに
桜太とその女の子のやり取りが始まる。
「沢田じゃん!なに?」
「これ、サンドイッチ作ったんだ。よかったら食べて!」
「おー!マジで?サンキュー!練習終わるといつも腹ペコでさぁ〜、めっちゃうれしい!」
そう言いながら笑顔で
サンドイッチが入ってるのであろう箱を受け取る桜太。
女の子もとってもうれしそうなはにかんだ笑顔・・・。
私、もう見ていられなくて
お弁当とクリームパン抱えたまま
その場から走り出していた。
バカみたい!
バカみたい!!
なんでこんな・・・
お弁当作ってやろうなんて気
起こしちゃったんだろう!
“和歌ちゃんがオレのために作ってくれるならもっとおいしいよ”
とか言っちゃって
ちゃんと作ってくれる子がいるんじゃない!!
なんて・・・
完全に八つ当たりだよね・・・・・・。
たまたま勝ち合っちゃったんだもん。
仕方ない。
それは分かってる。
分かってるんだけど・・・。
ずっと
桜太のこと拒否してる私が
こんなこと言うなんておかしいけど
私以外の人から
ああいうもの
受け取ってほしくなかった・・・・・・。
なんで
なんで・・・
私がこんな気持ちにならなきゃなんないの?
今にも
目から涙がこぼれそうになりながら
お弁当とクリームパンをカバンにしまって
帰りの途に着いたのだった。
 
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