「まどか・・・お願いがあるんだけど・・・・・・」
「どうしたの?」
翌朝。
朝練であやがいない隙を狙って
まどかに話を切り出す。
私がこんなに改まってお願いなんて
今までしたことないからか
まどかは少し驚いた様子だ。
「料理・・・教えてほしいんだけど・・・・・・」
私、まどかの顔が見られなくて
下を向いて少々小声になってしまう。
「えっ?なんて?」
小声だったけど主要部分は若干聞き取れたのか
少し驚いた様子だったまどかの顔が
本当に驚いた様子になって聞きなおす。
「だから!料理教えてほしいの!」
恥を忍びながらも
今度は大きな声が出てしまう。
「いいけど・・・突然どうしちゃったのか気になっちゃうな」
まどかはあやとは違う。
あやなら興味本位でおもしろ半分で
根掘り葉掘り聞いてくるだろうけど
まどかは無理には聞こうとしない。
でも、こうしてお願いしてる以上
まどかには話す義務があるよね。
「あやには言わないでね」
たぶん、私がこう言わなくても
まどかは言わないだろうけど、一応・・・。
「あの・・・桜太に・・・お弁当作ってやろうかなって・・・・・・」
まどかの顔がさらに驚いた様子になったあと
すごくうれしそうになる。
「アイツ!いっつもクリームパンばっか食べてるじゃない!?一応、エースだしさ!ちょっとぐらいマシなもの食べた方がいいかなって!!」
別にまどかに聞かれたわけじゃないのに
テレ隠しで
勝手にベラベラ口が動く。
こないだのデート・・・
結局、桜太が全部おごってくれたし
私はなにも言ってないけど
言われたくないだろうこと察知して
誰にも・・・あやにも言わないでいてくれてる。
あやが“いいヤツ”って言うことも
少し、分かった気がするし・・・
なにより
思いの外
楽しかったんだ・・・・・・。
「うん、じゃ、さっそく今日の放課後、ウチの部室くる?」
「部活に飛び入りとかして大丈夫なの?」
「体験入部なら問題ないでしょ?それに私、一応部長だし」
まどかが“えっへん!”って感じに胸を張る。
「そだね、よろしくお願いします」
私はまどかを頼もしく思いながら
丁寧にアタマを下げていた。
「なっちゃん!お米、洗剤で洗ってどーすんの!?」
「ハンバーグの玉ねぎはみじん切りなのに、これじゃ角切りだよ!」
「からあげ、もっと揚げなくちゃ!中まで火が通ってないよ!」
「スパゲティ、ゆですぎ!」
「きゃー!卵焼き、焦げすぎー!」
普段、大人しくて物静かなまどかを
キャーキャー言わせてしまうほど
私って本当に全然料理できないんだな・・・。
こんな感じで若干ヘコみながらも
なんとかお弁当が完成した。
ハンバーグにからあげ、卵焼き
スパソテー、タコさんウインナー
あとはグリーンサラダにプチトマト。
ご飯はのりたまを散らした上にのりを敷くのり弁。
まどかに手伝ってもらって
どーにか形になった。
「まどか、いつもこんなの難なくやってんだね・・・」
私、ちょっとグロッキーになりながら
まどかを尊敬の眼差しで見てしまう。
「えー?慣れればどってことないよ?」
まどかはひょうひょうと言ってのける。
「でも、ちゃんとできたじゃない。こんなグロッキーになってまで作ってくれるなんて、桜太くん、感動だね♪」
「ちょ・・・!シッ!大きい声で言わないで!!」
思わず、口の前に人差し指を立てて
声を潜めてしまう。
桜太に作ったなんて、周りの人に知られたら・・・。
まどかが後輩から聞いた話だと
桜太は結構人気があるらしい。
まぁ・・・
いつも明るくてニコニコしてるし
さわやかさも忘れてない。
ビジュアルだっていいし
さらに
バレー部のエースって肩書き。
背もまだまだ伸びてるって言うし
そりゃ、モテるよね・・・。
って!
これじゃ
私が桜太を受け入れてるみたいじゃない!
違う!違うんだからね!!
しっかりしろ!私!!
 
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