休みが明けて月曜日。

「ちゎーっす!」
お昼休み。
教室でお弁当を食べていたら
桜太がやってきた。

「おー、今日も来たか、若人!めげないねっ!」
「当たり前っす!」
「なんか手ごたえあった?」
「糠に釘、暖簾に腕押しって感じです」

え?

まどかの問いに
右手をアタマの後ろへやって
苦笑いする桜太。

だって
土曜日・・・
私はあくまで“通りすがり”だったけど
一応、デートになったわけだし
桜太にとっては“進展”じゃないの?


放課後。
写真部の部室で
土曜日に撮った写真を
パソコンでチェックしていると
「和〜歌ちゃん♪」
例によって
Tシャツに黒のジャージのハーフパンツ
首からはスポーツタオルをぶら下げた桜太が
ちゃちゃを入れに来た。

「なんの用?」
廊下に面した窓際に設置してあるパソコン越しに
窓の外から顔を出している桜太には目も向けない。
「ツレないなぁ〜・・・こないだ、デートした仲じゃん」
「・・・デートって思ってるんだ?」
「え?デートじゃなかったの?」
「だって、さっき、なにも言わなかったじゃない」
「あれ?言ってよかった?和歌ちゃん、あまり言われたくないのかなって・・・」

あっ
確かに・・・
特にあやには知られたくないかも・・・・・・。


「それよりさ!」
桜太が話題転換して少しほっとする。
「今度、オレのこと撮ってよ!」
「お断り」
「うぅ〜・・・瞬殺かぁ〜・・・・・・」
そう言って苦笑いしてる。

「アンタだからってわけじゃない」
一応、フォローでも入れておくかな。
「どういうこと?」
「風景専門だから。人物は撮らない」
「どうして?あや先輩のこと、撮ってたじゃない」
桜太は学校新聞の私が撮影したあやの写真のことを言ってる。
「あれは特別。私、被写体の魅力引き出す代わりに自分の被写体に対する気持ちを投影しちゃうの」
あやは親友だから別にかまわないや。
って引き受けたんだよね。
「うん、あの写真、撮った人はあや先輩のことが大好きなんだなって分かった」
「そーゆーこと!」
さすがにそう言われるとテレが生じてしまって
ぶっきらぼうな態度になってしまう。

「ってことはさ、和歌ちゃんがオレを撮ればどう思ってるか写真に如実に出ちゃうってわけだ」
「写真撮らなくても分かるでしょ?」

ずっとパソコンから目を離さずに話してたけど

うわっ!
こんな写真、撮ってたっけ!?
誰かに見られちゃ大変だ!!!

慌てて写真のチェック画面を最小化して
「それより、こんなに油売ってていいの?」
私は極めて平静を装って
桜太を追い払おうとする。
私の言葉にハッと時計を見る桜太。
「うわっ!こんな時間になってる!和歌ちゃん、またね!」
そう口早に言って、慌てて部室を後にした。