そんな私に転機が訪れたのは
数週間後のことだった――
「那智和歌子先輩!オレと付き合ってください!!」
気持ちのいい
すがすがしいほどの
超どストレート。
今、目の前にいる満面の笑顔の男の子も
このセリフと同じくらい潔いさわやかくん。
大きなクリッとした目に
スッと通った鼻筋。
イケメンというより
かわいいって感じ!
なにより、このさわやかさ!!
ここまでは合格点!!
でも・・・
身長は170ある私とそこまで変わらない?
少し高いかな?くらいで・・・
それに
今の彼のセリフに
気になるフレーズがあったような・・・・・・。
アタマの中で彼に呼び止められたところから
フラッシュバックする。
――昼休み
私は所属している写真部の部室がある旧校舎へ行こうと
校舎と校舎を繋ぐ2階の渡り廊下を渡っていた。
ふと見た街の景色が・・・
雨上がりの洗われた空気で
いつもと違うもののように
とてもキレイだった。
カメラ、持って来ようかな?
そんなことを考えながら
しばらく、見とれてたんだ。
そこへ・・・
「あのっ!」
突然
後ろから声をかけてきた男の子。
どんなアングルにしようか
景色に夢中だった私は
誰かがそこにいることに全然気づいてなかった。
「えっ・・・?」
私、少し驚いてきょとんとして振り返る。
若干、緊張してるかのように見えるその男の子。
「オレ、バレー部の香月桜太(かつき
おうた)っていいます」
自己紹介をされて
私と目が合うと
緊張気味だった表情が
さっと満面の笑みに変わって・・・
「那智和歌子先輩!オレと付き合ってください!!」
はい!ストップ!!
ここだ!
気になるフレーズ!
『先輩』?
ってことは・・・だ・・・・・・
「年・・・下・・・・・・?」
私、少しアゴを引きぎみに
彼を上目遣いで見ながら問う。
「はいっ!2年7組です!」
彼は変わらず
元気いっぱいに答えてくれる。
そんな彼とは真逆に
私から出たのは
深いため息と・・・
「ごめん、年下興味ない」
募集要項
C年上!最悪、同い年!
Bは分からないけど
@は完璧に近いクリアだったのに
残念だなぁ〜・・・。
「ごめんね」
もう一度
短く詫びの言葉を発して
私は部室へ向かおうとすると
「知ってます『彼氏募集要項C 年上!最悪、同い年!』ですよね。確かに学年は下だけど、誕生日は4日しか違いませんよ」
は?
彼のセリフに思わず振り返る。
「先輩、3月29日でしょ?オレ、4月2日生まれ」
また、この満面の笑み・・・。
っつーか・・・
「なんでそんなこと知ってんのよ?」
彼氏募集要項なんてごく親しい人にしか言ったことないし
ましてや、誕生日まで・・・。
私が怪訝な顔をして聞くのとほぼ同時に
彼の最初の自己紹介の言葉がアタマによぎった。
『バレー部の・・・』
「アンタ!バレー部っつった!?」
「えっ・・・?あっ、はい・・・」
つかみかかりそうなくらいの
ものすごい勢いで聞いたもんだから
積極性の塊って感じの彼もさすがに圧されてる。
でも私はそんなことは気にも止めず
戸惑い気味の彼をその場に残して
元来た方向へ走り出す。
突然おいてけぼりを食らった彼は
「ま・・・気長に行きますか」
長丁場を覚悟するのだった。
 
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