あっという間に時間が過ぎて
文化祭の行われる週になった。
あれ以降もいつもの電車に乗ってるけど
帆風くんには会えない。
そりゃそうだよね。
乗れないって言ってたし・・・。
それでも、期待して乗ってしまう私がいた・・・。
そんなある日の朝
「まどか!」
あやちゃんがものすごく険しい表情でやって来た。
「どうかしたの?」
「富高の友達から聞いたんだけど・・・」
そう聞いただけで帆風くんのことだと分かって
心臓がドキンと高鳴る。
「帆風、マネージャーと付き合い出したみたい・・・」
・・・え・・・?
今・・・なんて?
私、あやちゃんの言ってることがよく理解できてない・・・。
「えぇ!?なにそれっ!??」
なっちゃんも驚いてる。
「友達が直に見たらしいんだけど・・・帆風とマネージャーが抱き合ってたんだって・・・」
ドクンッ!
全身が心臓になったみたいな感覚が襲う。
「しかも、帆風の方から腕引っ張って抱き寄せてたって・・・」
「どういうこと!?好きな子はどうなったのよ!?」
「私だって分かんないよっ!」
あやちゃんとなっちゃんも困惑している様子だ。
私もう・・・まるで生きてる心地がしない・・・。
帆風くんに好きな子が居るって分かった時点で
いつか、こんな日が来ることも分かってたつもりだった。
だけど、いざその時になると・・・
受け入れられない・・・。
「まどか!大丈夫!?」
なっちゃんに支えられる。
もう、ひとりで立っていられないみたい・・・。
「・・・大丈夫・・・じゃないかも・・・」
そう言うと、滝のように涙がぼろぼろと流れ出した。
「少しは落ち着いた?」
授業をサボって食堂の前のベンチに座って
なっちゃんが買ってくれたジュースを飲んでいた。
「・・・う・・・ん、ありがと・・・」
「まどか、どうするの?」
あやちゃんが毅然として聞く。
「・・・ずっと・・・ずっと好きで、今やっと少し近付けたと思ってたのに・・・すぐにはあきらめられないよ・・・」
「すぐじゃなくても、いずれあきらめるの?」
「だって・・・付き合ってるんじゃ仕方ないもん・・・。私なんかかなわない・・・」
そう言うと
「まどか、“私なんか”とか言うな」
あやちゃんが怒り混じりの声で言った。
「帆風が垢抜けたり、マネージャーがかわいかったりするのはなんでだと思う?まどかと2人の決定的な違い」
私との違い・・・。
「自信だよ!自信」
そうだ、高校生の帆風くんはバスケに対する自信がみなぎっていたし
藤森さんは自信の塊だ。
「まどかだって素直だし優しいしかわいいじゃん!自信持て!強くなれ!!こんなことぐらいであきらめられる程度の気持ちじゃないでしょ!?」
そうだった・・・私、この気持ちを貫きたいと思ったんだった。
この気持ちだけは・・・
帆風くんを好きっていうこの気持ちにだけは絶対の自信がある!
帆風くんには迷惑かもしれない・・・だけど!
「私・・・帆風くんにちゃんと気持ち伝えたい!」
「よしっ!」
あやちゃんが満足そうな笑顔になって
パチンと指を鳴らす。
「決戦は土曜日だよ!」
 
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