はー・・・来週も会えるとは限らないのに・・・。
それにしても、藤森さんも必死だよね。
どうしたらあんなに積極的になれるんだろう?
きっと、かわいいからだけじゃないよね・・・。
なんて、いろいろ考えながら改札のところまで来た。
藤寺駅前には大型のショッピングモールがある。
ついでだし、買い物でもして帰ろう。と
改札を出ようとしたその時・・・

「畑野!」

えっ?
後ろから名前を呼ばれて振り返ると
電車に乗って行ったハズの帆風くんが走って来る!

「えっ?なんで!?」
「文化祭・・・のこと・・・伝え・・・忘れたと思って・・・」
さすがの帆風くんも息が切れ切れだ。
そんなことでわざわざ、こんなに息が切れるくらい走って?
あやちゃんに聞けば分かるのに・・・。

帆風くんはすぐに息を整えて続けた。
「文化祭、6月の最後の土日なんだ。試合は土曜日1時から。オレ、絶対試合出るから!」
帆風くんが力強く言った。
「うん、楽しみにしてるね」
私は笑顔で答える。
「オレ、クラスの文化祭委員になっちゃってさ・・・文化祭の準備とかでしばらく、いつもの電車乗れないから・・・」
「そ・・・うなんだ・・・」
残念だな・・・。
「あれ?・・・オレ、なに言ってんだろ?別に約束してるわけじゃないのに・・・」
帆風くんがひとりごとのように呟いて、少し赤くなる。
それって・・・意識してあの電車に乗ってくれてると思っていいってこと?
なんてね、都合よすぎるよね・・・。

「引き止めてごめんな」
帆風くんがいつもの調子で言う。
「ううん、わざわざありがと。文化祭がんばってね」
「サンキュー、じゃな!」
そう言って帆風くんはまた走ってホームへ戻って行った。
私は見えなくなるまで帆風くんの背中を見送った。

帆風くん・・・私、中学の時よりもっともっと
帆風くんのこと、好きになっちゃってるよ・・・。
もう、帆風くんが誰を好きでも関係ない。
私はこの気持ちを貫きたい!
そう思った時、少しだけ藤森さんの気持ちが分かったような気がした。