あやちゃん、なっちゃんとは仲直りできたけど
帆風くんのことはなにも解決してなかった。
あんなことがあったんだもん・・・。
意識的にあの時間の電車は避けるよね。
そしたら、もう会えない・・・。
不安を残したまま、また月曜日がやって来た。
改札を抜けてホームへの階段を下りる。
いつも乗る車両、2両目の一番後ろの扉の位置に立って
ドキドキしながら電車を待つ。
『明日野橋行きの電車が参ります。危のうございますので、白線の内側まで下がってお待ち下さい』
電車がホームに滑り込んで・・・
ぷしゅー!
扉が開く。
一瞬、乗るのをためらったけど、思い切って乗り込んで
帆風くんがいつも座ってる方に目をやった。
「よっ!」
いつも通りの帆風くんの笑顔がそこにあった。
「えっ!?なんかあった!?」
私の目からは思わず、涙がこぼれていて
帆風くんを焦らせてしまった。
「っごめん…なんでもないのっ」
私は涙を右手で拭いながら、笑顔でそう言った。
よかった・・・この電車に乗っててくれた!
私はまた帆風くんと会えたことが、とにかく嬉しかった。
「今日は綾部と那智は?」
「部活なの」
「そーなんだ、せっかくうまい切り返し、考えて来たのになぁ〜」
「あ・・・あやちゃんもなっちゃんも帆風くんに会ったら謝っといてって言ってた」
そう、私はふたりから言伝を頼まれてたんだ。
「確かにあの時は参ったけど、オレもなんか情けないことしちゃったしな・・・」
帆風くんが伏し目がちに言う。
「そんなことないよ!誰にだって触れられたくないことあるもん。ごめんね・・・私、ふたりのこと止められなくて・・・」
私がそう言うと・・・
「畑野は・・・気になんない?」
帆風くんが私の目をまっすぐに見て言った。
「えっ?」
私が帆風くんの好きな子、気にならないかってこと?
そんなの、気にならないわけない!
「ま、いいや・・・」
帆風くんは目をそらして、そのまま黙ってしまった。
どういうことなんだろう?
私に気にしてほしいってこと?
そ、そんなわけないよねっ!
しばらくして、帆風くんが口を開く。
「ウチの学校、来月の終わりに文化祭あるんだ」
「え?6月?」
「うん、最近そういう学校増えてるみたい」
「そうなんだ〜」
「文化祭だけど、運動部も招待試合するとこあって、ウチも全国大会の常連校呼べることになったんだ!オレ、絶対試合出たい!」
帆風くんが楽しそうに話す。
「レギュラー獲れそうって言ってたもんね」
「オレ、畑野にそんなこと言った?」
「あ・・・あやちゃんが言ってた・・・」
「また綾部かぁ〜」
帆風くんが苦笑いする。
それから少し間があって・・・また帆風くんが口を開いた。
「畑野さ・・・よかったらウチの文化祭、来ない?」
へっ?
「私が・・・富高の文化祭に・・・?」
「うん」
「行っていいの?」
「当たり前じゃん!」
「行く!」
「うん、来いよ!綾部と那智も誘ってさ」
「あやちゃんとなっちゃんも絶対行く!」
うわ〜!
帆風くんに誘われちゃった〜!!
やだ、嬉しすぎて顔のへらへらが止まんない・・・!
「あのさ!」
私がへらへらしていると、帆風くんが突然
少し強めの語気でそう言った。
 
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