あれから数日後――

「ねー!ねー!中学の時にいた帆風って覚えてる?」

“早耳のあやちゃん”こと、綾部京子(あやべ きょうこ)ちゃんの口から
突然、帆風くんの名前を聞いて、すごく驚いた。
あやちゃんのウワサ好きはハンパじゃない。
友達多くてあっちこっちにルートを持ってるから侮れない。

「あの目立たないパッとしないヤツでしょ?」
“いい男ハンター”のなっちゃん、那智和歌子(なち わかこ)ちゃんが言った。
ひ、ひどい・・・。
って、私も最初はそう思ったけど・・・。

「それがさー!バスケ部らしいんだけど、1年なのにレギュラー獲れそうなくらいうまいんだって!」
帆風くん、すごいんだぁ・・・。
ホントに楽しそうだったもんねー。
「しかもカッコよくなって、めちゃくちゃモテまくってて、すでに3人からコクられたらしいよ!」
う・・・そんなにモテてるんだ・・・。
「えー!?マジっ!??目ぇつけとけばよかった〜!!」
なっちゃんが半ば本気で悔しがる。
“いい男”には目がないんだよね。

「でもさぁ、そんなにいきなり豹変するもんなのかなぁ?」
「さぁ?私もまだ友達に聞いただけだからそんなには分からないんだけど・・・」
さすがのあやちゃんもまだ裏は取れてないんだ。
「もしかして、高校デビュー狙ってた!?」
「あははっ!なんかウケるーー!!」
さすがにちょっとひどいんじゃない!?
私はムッとした気持ちになった。

「私、こないだ帆風くんと会ったよ」
「えっ!?なにそれ!??」
「アンタたち、いつの間にそんなことに!??」
2人が勢い込んで聞いて来る。
「たまたまだよっ!学校の帰りに電車で会っただけっ!!」
「なんだ・・・ビックリするじゃん!」
「でも、会ったんだ?カッコよくなってた??」
なっちゃんが興味津々で聞いて来る。
「・・・うん、カッコよくなってるかもって思った・・・」
そう言うと、なぜか赤くなってしまった。
「なに赤くなってんの?この子」
あやちゃんがすかさず突っ込む。
「なに?惚れた?」
なっちゃんも冷やかして来る。
「そんなんじゃないよっ!」

なんて言い切ったけど・・・
うそ・・・
ホントは
誰にもナイショで
ずっと好き・・・。