「あや!」

セッターから
あたしに向かってトスが上げられる。

「はいっ!」

ダンッ!

踏み切って
ボールに向かってジャンプ!
そして

バシィィィッッ!!

思いっきりボールをたたくと
あたしの手からボールに勢いが伝わって
相手のブロックを弾いて

タンッ!

体育館のフローリングの床にボールが跳ねた。

ピピーッ!

ゲームセットのホイッスルが響く。



今日は他校との練習試合。
最近、ずっと連勝中なんだ♪
あたしの活躍のお・か・げ☆
なんちゃって〜!

「あや!今日も絶好調じゃーん!」
「へへっ☆」
ハイタッチを交わしながら
先輩たちにアタマをぐりぐりなでられていると・・・

「綾部のアタック、炸裂だったな〜」

男子の声がした途端
あたしの周りに群がってた女子たちが
「ひゃ〜〜っ」
先輩、後輩、同輩
みんな例外なく悲鳴を上げて
2〜3歩後退りする。

彼女たちを尻目に
「とーぜんですよ!あたしのパワーは底なしです!」
ユニフォームの袖を肩まで捲り上げて
右腕でガッツポーズを作って見せる。

「タカ!顧問呼んでる!」
体育館の出入口からあたしに声かけてくれた人が呼ばれて
「おぅ!今行く!」
そう返事して
「とりあえず、来年まで女バレは安泰だな」
にっこり笑ってあたしのアタマをポンってしてから
出入口の方へ走って行った。

その人が出て行って完全に姿が見えなくなったのを確認して
「ちょーっと、あやー!なんで先輩と普通にしゃべれんのー!?」
「アンタ、うらやましすぎんのよ!」
「私もアタマ、ポンってされたいですぅ〜!!」
みんながいっせいにあたしに詰め寄る。

「なんでって・・・」
「くそー!久須美先輩に触られたアタマ、触らせろーー!!」
「私もっ!!」
「やっ・・・ちょっとっ!!ぎゃーーっ!!」
さっき以上に
髪の毛がちぎれるんじゃないかってくらい
みんながあたしのアタマをなで回す。


申し遅れました!
あたし、綾部京子16歳、高2。
9月生まれのおとめ座の乙女でーす♪
なーんて
星座がおとめ座なだけで
『乙女』
なんて言葉には程遠ぉぉぉい男勝りな暴れん坊!
って、さすがにここまでは自分で言ってても虚しいな・・・。
周りの女の子はみんな
男の子の目を気にしてか
自分を飾ることに夢中だけど
あたしはバレーが楽しくて仕方ないんだ!

え?
さっきのみんなを異様な行動に導いた先輩のこと?
あの人は男子バレー部のキャプテン・久須美貴之(くすみ たかゆき)先輩。
背が高くてイケメンだし、バレーもうまいし
やさしいし、女子からの人気は絶大!!
みんなの憧れの的。

あたし?
あたしは・・・うん
尊敬できる先輩だけど
みんなみたいに『彼女になりたい!』とかは
特に思わないなぁ〜。
あたしの恋人は今んとこバレーボール!だからね♪


そんな
バレー一筋!
のあたしを巻き込んで
ホレたハレたの事件が勃発するのは
それから数日後のことだった。