全部話すと
特になにも言わなかったけど
あやは納得いかないって感じだった。
たぶん
まどかだって残念に思ってるだろうな。
2人とも
桜太の後押ししてたからね・・・。


「ちゎーっす!」

お昼休み
今日も変わらず
桜太の登場だ。

「桜太、まだ知らないんだね・・・」
あやが気の毒そうに言う。
「ん?なにをですか?」
いつも通り、ニコニコな桜太。
言ったらどんな顔するのか
少しドキドキしてきちゃった・・・。

「なち、彼氏できたんだって」

あやのひとことに
「ホントに?」
目を丸くして私の顔を覗き込む。
「うん、ホント」
私、ドキドキを隠しつつ
いつもの感じで答える。

「へぇ!よかったじゃん!」

・・・えっ?

予想には全くなかった反応に
思わず、固まってしまう。

「ずっと“彼氏絶賛大募集中”だったもんね」

桜太のニコニコは
ひとつもほころびが見当たらない。
本当にそう思って言ってるっぽい・・・。

「アンタ、どういう状況か分かってる?ショックでおかしくなった?」
そんなあやの問いに
「だって、和歌ちゃんは幸せなんですよね?だったら、オレもうれしいですよ」
桜太は
『なんでそんなこと言うの?』
とでも言わんばかりだ。

「でも、桜太くんは失恋しちゃったことになるよね・・・」
今度はまどかが残念そうに言う。
「あ〜・・・そうかぁ、そうですね」
これもいつも通り
私の机の前の席に座って
すでにクリームパンを食べ始めていた桜太が
どこに視線をやるでもなく
何の気なしにって感じで答えた。
「って、アンタ、今気付いたの!?どこまでノーテンキなんだよ!?」
桜太とは対照的に勢い込むあや。

ホントにそうだよね。
でも、桜太の反応は意外で
意外すぎて
なんだかホッとしたような・・・
それでいて
なんだか残念なような・・・・・・
なんとも複雑な気持ちが私の中で渦巻いていた。


その日以降も
お昼休みや放課後の部活中
桜太はこれまでと変わりなく
私の前に現れる。
私への態度もこれまでと全然変わりない。
そう考えてみると・・・
桜太は最初から
執拗なアプローチをかけてくるわけでもなく
とにかく毎日顔を見せに来る。って感じ。
私の方もそれが・・・
毎日、桜太の顔を見ることが
当たり前になってるもんね・・・・・・。

それが
桜太の作戦
なのかな?