お昼休み。
例によってまどかとあやと3人で
屋上のいつもの場所でお弁当を食べてたら
桜太がやって来た。
「ちゎーすっ!」
「アンタ、マメだねぇ〜。アンタの顔見ない日ないよ!」
「そりゃそうでしょ!放課後、ほぼ毎日会うじゃないですか」
「そうだね、あはは」
桜太とあやが特に面白くもないコントを繰り広げて笑ってる。
「私、放課後の下ごしらえがあるからもう戻るね!」
まどかが食べ終わったお弁当箱を閉じて
手早く巾着にしまいながら言った。
まどかは家庭科部の部長なんだよね。
あの引っ込み思案だったまどかが部長だなんて・・・
成長したなぁ〜って感心しちゃう☆
「今日のメニュー、なんですか!?」
桜太が目を輝かせてまどかに聞く。
「ナイショ。楽しみにしてて!」
まどかは片目を閉じて見せる。
時折、バレー部には
家庭科部からの差し入れがあるらしい。
あやとまどかが仲いいから
その関係で作ったものを差し入れするようになったんだって。
「あっ!あたしも購買部でノート買わなくちゃだ!」
今度はあやが突然思い出したかのように言う。
コイツの魂胆は丸見えだ。
私と桜太を2人にしようとしてるに決まってる。
そもそも、アンタ
ノートなんてまともに取ってないでしょうに・・・。
2人が去って行ったあと
桜太が私の隣に座って
お約束のクリームパンを取り出す。
「ホントに好きだよね。毎日のように食べてて飽きない?」
「うん、好きだからね。でも、和歌ちゃんが作ってくれるお弁当ならもっと飽きないよ」
そう言って桜太はにっこり笑う。
「は?なんでいきなりそんな話になんのよ?そもそも私、料理なんてできないし。まどかの差し入れで十分でしょ」
桜太の方には一切目を向けず
お弁当箱の中を見ながら言い放つ。
「まどか先輩の差し入れはもちろんおいしいけど、和歌ちゃんがオレのために作ってくれるならもっとおいしいよ」
そんな歯の浮くようなセリフを吐かれて
じっとりとした目つきで桜太を見てしまう。
桜太ってホント、めげない。
私の態度は最初のころとそう変わってないのに
桜太もまったくひるむ様子なく
気にする様子もなく
同じようにこういうことを言ってくる。
「じゃあ、お弁当の代わりにオレとデートしようよ!」
「はぁ?なにが代わりよ!またいきなりそんな話・・・」
「明日土曜だけど練習休みなんだ。朝10時、駅前で待ってるから!」
桜太はそう言い放つと
「ちょ・・・!私、行くなんてひとことも言ってないからね!!」
と私が言ってるのもまったく聞く様子なく
いつの間にか食べ終わってたクリームパンの袋を丸めて手に握って
さっさと屋上を後にする。
・・・・・・ったく・・・
あの心の強さは
一体どうやったら養われるんだ?
ひとり取り残された私は
変に感心するばかりだった。
 
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