私、春日智香の結婚が決まったと、隣の家の圭吾くんに話したのは、何のついでだったっけ?
「相手は誰?」
って訊かれちゃった。
(まだ、小学3年生なのに、ちょっとませてるなぁ〜)
とか思いながら翔真のことを話した。
翔真と知り合ったのは職場だったこと。一つ年上の先輩で、すごく大切な人だということ。

それを聞いた圭吾くんがあまり悲しい顔で私を見上げてきた。

多分ね、すごく圭吾くんに懐かれているんだと思っている。勘違いでも自惚れでもなく。

さすがに、24歳の私が小学3年生の子に気持ちが傾くわけもない。

でも、捨て猫のような彼の眼を見ていると、
「ん〜…。誕生日をお祝いしてあげれるのは今年までだから、いっしょにお祝いをしよっか?」
って提案してみた。

実は圭吾くんの誕生日は12月24日のクリスマスイヴ。特に今年は天皇誕生日と土日が重なっての3連休の真ん中の日。
本当は翔真と過ごす予定だったんだけど、あんな瞳で見つめられちゃったら、ね。

翔真、怒っちゃうだろうなぁ。
だって、独身最後の最後のクリスマスイヴだもん。
翔真は結構そういったイベントを大切にしてくれる。
でもね、私のいうことは結構聞いてくれるんだ。優しいんだな。

この間も高校時代に過ごした思い出の校舎が取り壊されるって話をしたら一緒について来てくれたの。
今回もきっとちょっと嫌な顔をするかもしれないけど、翔真だったら聞いてくれるはず。

そしたら圭吾くんにとびっきりのケーキを焼いてあげるつもり。
誕生日祝いに、圭吾くんが大好きないちごのケーキを。

そのケーキにおまじないをかけてあげたい。
私が彼方と出会ったように、
私が翔真と結ばれたように。

彼のこれからの人生により多くの素敵な出会いがありますようにと。

これが、私と圭吾くんが一緒に過ごすラストクリスマスだけれど、
圭吾くんがいずれ好きな人と過ごせるファーストクリスマスまでのおまじないになりますように。